日々の雑感帖。小説は25pmにて公開しています。
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路傍の石

山本有三路傍の石』を読んだ。起承転結ものは好みではないが、この作品には惹きつけられた。私自身が恵まれた環境で育っていないので、苦労の様子を描く様には、それくらいで泣いて・・・、と思っていたが、読者の同情を得ることが著者の書きたいことではなく、苦労して生きていくうえで学び考え、その時絶対正しい考えだと思ったことも違う経験で改変していく、そして行き着くところは、というものだと思う。思う、というのは、執筆されていたのが戦中で軍部の検閲により内容を変更せざるを得なくなり、途中で書くのをやめてしまったため。内容は違えど苦労の中での思考の変遷はまさに自分が行ってきたもので、この先がそういう点で気になった。ただ、純文学に比べてストーリー重視のものは読み返したいと思わないのは変わらなかった。文そのものを楽しむ純文学は何度読んでもいい文だと感じ入るが、ストーリーが気になる本は読み返すと言ってももうストーリーを知ってしまっている。

 

これを読んでいる人で、本当の苦しみのただ中にある人がいたら、死を選ぶのは下策、ただ耐えているのは中策、原因を考えて対策を講じる、受け止め方を変えるのが上策だと伝えたい。一回の試行錯誤がだめでもそれを糧に何度でも繰り返し一歩ずつ進むこと。進んでいると実感できなくとも道が正しいのなら進んでいるんだと自分を信じること。乗り越えた壁が高いほど得るものも大きいが、乗り越えられないと壁の内側で自殺となってしまう、生き地獄になってしまう。生死をかけるほどの苦労を経験せずに生きてきた人にはわからない厳しい環境も現実にはある。諦めず思考することを捨てないでほしい。

 

こういう地べたを這ったような経験があるから、おしゃれな作品に嫌気がさし、泥臭い作品に好感を抱くのだろう。