日々の雑感帖。小説は25pmにて公開しています。
私に利益の入るアフィリエイト等はございません。

 

林の奥で

 み゛ーんみ゛んみ゛んみ゛ー・・・


 もう夏も終わりだというのに蝉のなき声が聞こえる。

み゛んみ゛んみ゛ー。あーもう! うるさいうるさい! み゛ー。

・・・え、いや、鳴いているのは僕だ。僕はこの夏が始まってからずっと、

鳴いていたんだ。そしてこの夏に必死にしがみついて鳴いてきたんだ。

もう9月の初旬。はじめはがっしりと幹をつかまえていた手も、今はもう力ない。

根かぎり鳴こうにも、かすれた音が聞こえてくる。日が高くなるにつれて

上の方へとのぼっていくのも億劫になってきたところだ。


 今やめれば、どんなにラクだろうかと考える。ぼとりと落ちる。

仰向けで、もがく僕。眼前に舞いあがる塵は、ひかりをうけてきらきらと

きれいに輝くだろう。陽のひかりだけはきっと僕を祝福してくれる。

その祝福してくれているはずの陽の、熱を帯びた光はだんだんと

僕を熱していく、焦がしていく。意識が向こう側へもっていかれる感覚。

かすんだ視界のなかで揺れる青草。そのざわざわとした葉擦れのおとが

ぐるりとつつみ、抜けるような秋の風はなにも知らないよ、と青空の下そよ吹く。

ほかの人間が何人もすどおりしていって、たまたま通りかかった猫に

くわえられ、去る。


 なんと美しい光景だろう。しかしまだ早い。ぜんぜん早い。これまで

ずっと頑張ってきたじゃないか。先が見えずに足掻くのは、辛く、不安で、

どうしようもない。やりきれないんだ!! それはそうだ。そして

先が見えたときはもっと苦しいだろう。しかしそう決まっているものは

変えようがない。苦しくなったら休み、苦しくなったら休み、鳴こう。